「ナカヤマ」という多治見の洋食器メーカーをご存知ですか?
中山保夫さんが1960年に創業、その洗練されたデザインと高い技術で宮内庁にも商品が納められたという陶磁器製造の会社です。
今回はそのナカヤマのショールームにお邪魔してきましたよ。
一度は途絶えかけた伝説の洋食器メーカー ナカヤマ
多治見市平井町にあるこちらがナカヤマ。
事前に連絡をしてアポイントをとると、ショールームの見学をさせて頂けます。
本来写真撮影はNGというところを、ブログ掲載のためということで特別に許可を頂きましたよ。
このナカヤマ、実は売り上げ低迷により2002年に会社は解散しています。その後創業者の中山さんお一人で製造を続けていらっしゃたのですが、高齢になられて引退。後継者もおらず、一度は幻の洋食器となっていたところを現在の社長、松田さんが残っていた在庫など全てを買い上げて「ナカヤマ販売」として2年前に会社を再開されました。
今回はその松田さんにショールームを案内して頂きました。
スペインの義父がもたらしたナカヤマとの出会い
そもそも私がナカヤマを知ったのはスペインの義父がきっかけでした。
3年前、スペインから来日した義父を連れて多治見の美濃焼ミュージアムを案内した時、ミュージアム内で販売されていたナカヤマのカクテルグラスに義父が一瞬で魅せられたのでした。
その時は確か在庫が2つあっただけ。自分用と知人へのプレゼント用でそれぞれペアで購入したいという義父の要望にこたえるべく、美術館スタッフに取り寄せできないかとあれこれ掛け合ったものの既に中山さんが製造をやめた後とあって願い叶わず、結局その場にあった2つだけを義父が購入したのでした。
それがこちら。
ステムウェアという特別な技法で作られた継ぎ目のない繊細な形の磁器のカクテルグラス。この技術が出来るのはナカヤマだけだそうですよ。
そう思うと義父の審美眼というものはさすがだな、と思うわけです。まさに義父はこの繊細なフォルムに惚れ込んで購入していたので。
そんな経緯があり気になりはじめたナカヤマ。その再開とショールームの存在を知り、今回出掛けてみたというわけです。
そしていざ出かけてみたらそこには美濃焼のイメージをくつがえす、華やかな磁器の世界が待ちうけておりました!
幻の技法 くさらし
入り口から順に商品の説明をして頂きましたが、しょっぱなからその美しさにやられましたよ。
劇薬を使う「くさらし」という技法で仕上げられた貴重なシリーズ。
今ではこの技法は禁じられているため、同じ物を製造することは出来ないのだとか。
高級感だけでなく気品も漂う美しさです。
宮内庁に納品され迎賓館で今も使われているコーヒーカップ
そしてこちらが宮内庁に納品されたというコーヒーカップ&ソーサー。
迎賓館で今も利用されていると聞きましたよ。気品あふれる佇まい。何というセンスの良さ!と驚きを隠しきれません。
美濃焼というと、どうも土臭い陶器の印象が強くありますが、いやいやこの地でもここまで洗練された洋食器が作られていたことに改めて感動しました。
ハンドペイントの華麗なる世界
ナカヤマの特徴は磁器でうみだす繊細なフォルム、高度な転写技術とともに、手描きの絵付けの素晴らしさにもあります。
松田さんがナカヤマを再開してから、また3人の熟練の絵付け職人さんが戻ってきてくれたとのこと。
手描きのもつ何とも言えない優しさとぬくもりのようなものを感じますね。ロマンティックな食器はあまり趣味ではないにも関わらず、何とも愛おしく思えうっとりと憧れてしまいました。
手間のかかる絵付け。しかもどんなに気をつけて焼いてもひび割れなどがおこりB品になってしまうものも多く、生産性がとても悪いのだとか。
海外の安い製品にはかなわず、売り上げが落ちていったという事情も頷けました。
優れた技術と洗練されたデザイン力がありながら消えつつあったナカヤマ。しかしこの素晴らしさはもう一度しっかりと見直される価値がありますよね。松田さんが復活させてくれたことで、こうしてまた一般に購入することが出来るようになったことは、かなり幸せなことではないでしょうか?
ボーンチャイナのティーカップ
ハンドペイントの素晴らしい品にはなかなか手が届かなくても、シンプルなこんなティーカップならどうでしょう。
品のある形、そして色。
ボーンチャイナです。
紅茶を注いだ時の様子を想像するとワクワクしてきますね。
絵付けがない分、手の届きやすいお値段でしたよ。
同じ形で転写がほどこされたこちらのタイプもまた美しく。
ウィリアム・モリス的なこちらも麗しうございました。
ニューボーン菊型シリーズ
個人的に気になったこちら。ボーンチャイナとは異なり、ニューボーンと呼ばれる磁器のシリーズ。
ゴールドのラインは手描きだそうですよ。
セットで揃えたら素敵でしょうね。
ナカヤマの商品はどこで見ることができる?
こんなに素晴らしいナカヤマの商品、現在のところ購入できるのはナカヤマ販売のインターネットショップ、多治見美濃焼ミュージアム内のショップ、岐阜県現代陶芸美術館のショップ、など限られた場所のみだそうです。
ショールームは事前にアポイントをとれば見学させてもらえます。
ナカヤマ販売:0572-27-6211
そして、なんと4月には多治見美濃焼ミュージアムでナカヤマの展覧会が開かれるということでしたよ!ナカヤマの商品を美術館でじっくり堪能できるのは楽しみですね。
多治見の秘宝!ナカヤマの洋食器、これからも末永く世にあり続けて欲しいと切に願うのでありました。