多治見市・虎渓山永保寺「雪安居(せつあんご)の開講式」と雲水日記

10月の半ばに虎渓山永保寺で行われた「雪安居(せつあんご)の開講式」の様子を撮影させて頂きました。

永保寺 雪安居の開講式 2017

と言ってもなかなか何のことか分からないことが多いので徳林院のご住職にお借りした下記の本から抜粋しながらその様子をお伝えしたいと思います。

雪安居(せつあんご)の開講式

開講式とは僧堂の修行期間が始まる際の式、いわゆる雲水(修行僧)さんの始業式のようなもので年に2回春と秋に行われます。

秋から始まる修行期間を「雪安居」というそうです。

式では老師様が雲水さんに向けて祖師の語録を講義されます。

式の始まる前のご本堂。永保寺 雪安居の開講式 2017

座布団の上には味わい深い紙が置いてありました。
永保寺 雪安居の開講式 2017

中にはさんであるのは本日の講義の語録でしょうか。

永保寺 雪安居の開講式 2017

さて、これからどんな式がはじまるのでしょう。

永保寺 雪安居の開講式 2017

 

午前十時、まず喚鐘3通でその行事は始った。続いて大鐘十八声。大衆は真威儀の正装で待つうちに、とうとう法鼓の合図となって本堂に入場。   「雲水日記」開講 シーズン始め より

永保寺 雪安居の開講式 2017

お寺では全てのことが鐘や太鼓の合図で始まるそうです。

永保寺 雪安居の開講式 2017

法鼓(ほっく)という太鼓の合図はなかなか聞き応えがあります。

雲水日記には

ある僧が「真過(本当の悟りの境地)」について和尚に問うと

「まあ、太鼓を打つ稽古をしなさい。会得する何かがあるはずじゃ。」それから何を聞いても訊ねても「ともかく太鼓を打て」の一点張り。(中略)この天下無双の太鼓の音、新到にはいつになったら解ることやら。 「雲水日記」法鼓より

とありました。これもまた大切な修行のようです。

式が始まりました。

永保寺 雪安居の開講式 2017

永保寺 雪安居の開講式 2017

読経。

永保寺 雪安居の開講式 2017

 

五体投地の礼拝。私は今まで知らなかったのですがこの時に僧侶の方は座具という敷物を敷くんですね。

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I was fascinated by this piece of cloth. It is called "zagu". Monks use it like a carpet when they go down on their knees to worship in the ceremony. They treat it in very beautiful way. I wanna know more about this cloth. 法要の時の礼拝に使われる「座具」という布。座具は僧が常に持つべき六物のうちの一つ。インドでは坐臥の時に使うのだそう。韓国のポジャギのようでもあり、法要の間興味深く観察してしまいました。畳み方や袈裟にかける時の所作がまた美しくて。新しく知ることの喜びがまた一つ。 #虎渓山 #永保寺 #禅寺 #法要 #座具 #寺 #布 #袈裟 #temple #zen #patchwork #cloth #buddism #六物 #多治見 #ポジャギ #tajimi #beautifulcloth #simple #hamble

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華美なところがなく、清楚な雰囲気漂うこの座具になぜか惹かれるものがありました。

この日は老師様に代わり、京都 南禅寺の管長様が講義をされました。

永保寺 雪安居の開講式 2017

難しい言葉で講義をされるのかと思いましたが、お話し自体は一般人にも分かりやすい語り口でのお話しでした。

永保寺 雪安居の開講式 2017

永保寺 雪安居の開講式 2017

 

開講式の後には施餓鬼の法要が行われ、その後出席された和尚さんや参詣された信者さん達に昼食(斎座)が振舞われました。

斎座で給仕をするのも雲水さんの役目なんですね。

永保寺 雪安居の開講式 2017

椀頭(わんず)=食器の管理をする係のこと。

永保寺 雪安居の開講式 2017

典座(てんぞ)、椀頭(わんず)、供給(くきゅう)、殿司(でんす)などの役割に従って終日目のまわる忙しさで立ち働かねばならない。方丈の大広間に赤毛氈を展べ、全ての人に一様に朱塗の斎膳でお斎を出して鄭重に給仕をする。 「雲水日記」 款接 接待係 より

永保寺 雪安居の開講式 2017

「雲水日記」を読みながら振り返った永保寺の開講式。雲水さんの知られざる世界をわずかばかり垣間見ることができました。そしてこの裏には大変苦しい修行の数々があることも本から知りました。

この日は連日の雨が嘘のように爽やかな秋晴れ。この日の空のように清々しい気持ちで雲水さん方が新シーズンをはじめ、苦しい修行の日々を乗り越えて下さることを願うばかりです。

永保寺 雪安居の開講式 2017