10月の半ばに虎渓山永保寺で行われた「雪安居(せつあんご)の開講式」の様子を撮影させて頂きました。
と言ってもなかなか何のことか分からないことが多いので徳林院のご住職にお借りした下記の本から抜粋しながらその様子をお伝えしたいと思います。
雪安居(せつあんご)の開講式
開講式とは僧堂の修行期間が始まる際の式、いわゆる雲水(修行僧)さんの始業式のようなもので年に2回春と秋に行われます。
秋から始まる修行期間を「雪安居」というそうです。
式では老師様が雲水さんに向けて祖師の語録を講義されます。
式の始まる前のご本堂。
座布団の上には味わい深い紙が置いてありました。
中にはさんであるのは本日の講義の語録でしょうか。
さて、これからどんな式がはじまるのでしょう。
午前十時、まず喚鐘3通でその行事は始った。続いて大鐘十八声。大衆は真威儀の正装で待つうちに、とうとう法鼓の合図となって本堂に入場。 「雲水日記」開講 シーズン始め より
お寺では全てのことが鐘や太鼓の合図で始まるそうです。
法鼓(ほっく)という太鼓の合図はなかなか聞き応えがあります。
雲水日記には
ある僧が「真過(本当の悟りの境地)」について和尚に問うと
「まあ、太鼓を打つ稽古をしなさい。会得する何かがあるはずじゃ。」それから何を聞いても訊ねても「ともかく太鼓を打て」の一点張り。(中略)この天下無双の太鼓の音、新到にはいつになったら解ることやら。 「雲水日記」法鼓より
とありました。これもまた大切な修行のようです。
式が始まりました。
読経。
五体投地の礼拝。私は今まで知らなかったのですがこの時に僧侶の方は座具という敷物を敷くんですね。
華美なところがなく、清楚な雰囲気漂うこの座具になぜか惹かれるものがありました。
この日は老師様に代わり、京都 南禅寺の管長様が講義をされました。
難しい言葉で講義をされるのかと思いましたが、お話し自体は一般人にも分かりやすい語り口でのお話しでした。
開講式の後には施餓鬼の法要が行われ、その後出席された和尚さんや参詣された信者さん達に昼食(斎座)が振舞われました。
斎座で給仕をするのも雲水さんの役目なんですね。
椀頭(わんず)=食器の管理をする係のこと。
典座(てんぞ)、椀頭(わんず)、供給(くきゅう)、殿司(でんす)などの役割に従って終日目のまわる忙しさで立ち働かねばならない。方丈の大広間に赤毛氈を展べ、全ての人に一様に朱塗の斎膳でお斎を出して鄭重に給仕をする。 「雲水日記」 款接 接待係 より
「雲水日記」を読みながら振り返った永保寺の開講式。雲水さんの知られざる世界をわずかばかり垣間見ることができました。そしてこの裏には大変苦しい修行の数々があることも本から知りました。
この日は連日の雨が嘘のように爽やかな秋晴れ。この日の空のように清々しい気持ちで雲水さん方が新シーズンをはじめ、苦しい修行の日々を乗り越えて下さることを願うばかりです。